睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、無呼吸が起こる仕組みによって閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) と 中枢性睡眠時無呼吸(CSA) の2つのタイプに分類されます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸は、上気道が物理的に狭くなったり塞がれたりすることで呼吸が止まるタイプです。睡眠時無呼吸症候群の約9割は、この閉塞性タイプに該当します。
上気道が狭くなる主な原因として、首やのど周囲に付着した脂肪のほか、扁桃、舌根(舌の付け根)、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋など、上気道周辺の組織の肥大が挙げられます。
日中、立って活動している間は問題が起こりにくいものの、仰向けで眠ると重力の影響により、脂肪や組織が喉の奥に落ち込み、気道を圧迫・閉塞しやすくなります。
骨格が大きければ、多少の脂肪や組織の増加があっても影響は少ないとされています。しかし日本人は、下あごが小さく後退している方も多く、もともと気道が狭くなりやすい傾向があります。さらに歯並びの影響で口腔内が狭い場合、舌が収まりきらず、気道側にはみ出してしまうこともあります。
いびきとの関係
いびきは、鼻や口そのものが鳴っているのではなく、狭くなった気道を空気が通過する際に生じる振動音です。仰向けで寝るといびきをかき、横向きになると治まる場合は、仰向け姿勢によって気道が狭くなっている可能性が高いと考えられます。
睡眠中は全身の筋肉が緩み、休息状態に入ります。そのため、のど周囲で気道を支えている筋肉も弛緩し、上気道はさらに圧迫されやすくなります。もともと気道が狭い状態では、重力の影響を受けやすく、狭窄や閉塞が起こりやすくなります。
いびきをかいている方は、閉塞性睡眠時無呼吸の可能性が高いので、要注意です。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
中枢性睡眠時無呼吸は、気道が狭くなったり塞がれたりしていないにもかかわらず、呼吸が止まってしまうタイプです。何らかの原因で、脳からの「呼吸を行う」という指令が出なくなることで無呼吸が起こります。
閉塞性睡眠時無呼吸では、血中の酸素濃度が低下すると脳がそれを感知し、呼吸を再開させようと指令を出します。一方、中枢性睡眠時無呼吸では、その呼吸指令そのものが出ないため、呼吸を再開しようとする体の反応が見られません。
中枢性睡眠時無呼吸は、心不全との関連が強いことが指摘されています。慢性的な心不全により、呼吸を調節する神経信号の伝達がうまく機能しなくなり、無呼吸が生じます。また、この無呼吸状態が心不全をさらに悪化させる可能性があると考えられています。
予防するために
睡眠時無呼吸症候群は、糖尿病や高血圧、心不全などの生活習慣病と関連が深い疾患です。そのため予防においても、規則正しい生活習慣を整えることが基本となります。バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、健康的な体づくりを行うことが重要です。
なかでも、睡眠時無呼吸症候群の予防として特に意識したいポイントを以下にご紹介します。
1.適正体重を維持する
睡眠時無呼吸症候群では、首やのど周囲に付着した余分な脂肪や、組織の肥大が上気道を塞ぐ原因となります。特に、下あごが小さい、あるいは後退している方では、わずかな体重増加でも気道が狭くなりやすいとされています。
余分な脂肪をためないよう体重を適切に管理することは、睡眠時無呼吸症候群の予防において非常に重要です。
2.飲酒といびきの関係に注意する
普段はいびきをかかない方でも、飲酒した日の夜だけいびきをかくことがあります。これは、アルコールによって全身の筋肉が弛緩し、のどの筋肉も緩むためです。
睡眠中はもともと筋肉が弛緩するため、飲酒が加わることで上気道はさらに狭くなり、いびきや無呼吸が起こりやすくなります。
いびきをかきやすい方や、寝酒の習慣がある方は、就寝前の飲酒を控えることが予防につながります。
3.口呼吸を改善する
上気道とは、鼻、鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭を指します。口は呼吸の通り道にもなりますが、本来は消化管の一部であり、呼吸は鼻で行うのが理想的とされています。睡眠時無呼吸症候群においても、口呼吸をしていると咽頭が狭くなり、気道が閉塞するリスクが高まるといわれています。
さらに口呼吸は、健康面でもさまざまな悪影響を及ぼします。鼻には、空気を加湿・加温し、異物を取り除く働きがあり、気道や肺を守る重要な役割があります。
口呼吸ではこれらの機能が十分に働かず、感染症のリスクが高まるほか、歯肉炎や虫歯、噛み合わせの悪化につながることも指摘されています。
4.睡眠薬の服用に注意する
多くの睡眠薬は、無呼吸症状を悪化させる可能性があります。上気道の筋肉が緩みやすくなり気道が塞がれやすくなるほか、無呼吸によって酸素濃度が低下した際に、呼吸の回復が遅れるリスクがあるとされています。
睡眠薬の使用が必要な場合は、自己判断せず、必ず医師と相談したうえで服用することが大切です。
5.睡眠時の姿勢を工夫する
仰向けで寝ると、重力の影響で舌や軟部組織が喉の奥に落ち込み、気道が塞がれやすくなります。
一方、横向きで寝ることで、いびきや上気道の閉塞が軽減される場合があります。
抱き枕などを活用し、横向きの姿勢を保ちやすい環境を整えることも有効な対策の一つです。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす事故のリスク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状の中で、社会的に特に大きな問題となるのが、日中に突然襲ってくる強い眠気です。会議中に居眠りをしてしまう程度であれば注意で済むかもしれませんが、自動車の運転中に発生した場合、重大な事故につながる危険性があります。
ある調査では、運転中に眠気を感じたことがあると回答した割合は、SAS患者で健常者の約4倍、実際に居眠り運転を経験した割合は約5倍に上ると報告されています。さらに、SAS患者の4人に1人以上が居眠り運転の経験があると回答しており、事故の発生率も非SAS者と比べて約7倍高いとされています。
交通事故との関連と法的責任
実際に交通事故後の調査において、運転者に睡眠時無呼吸症候群が疑われるケースは少なくありません。2012年に発生した関越自動車道のツアーバス事故では、多数の死傷者が出ました。運転手には睡眠時無呼吸症候群の症状が確認され、裁判では自動車運転過失致死傷罪として実刑判決が下されています。
一方、2002年に和歌山県で起きた正面衝突事故では、睡眠時無呼吸症候群による突発的な入眠の可能性が否定できないとして、無罪となった事例もあります。
このように、睡眠時無呼吸症候群があるからといって直ちに免責されるわけではありません。急激な眠気により運転注意義務を果たせなかった可能性がある場合や、本人に病気の自覚がなかった場合などに限り、刑事責任が問われなかったり、起訴猶予となるケースが見られます。
一方で、眠気を自覚しながら運転を継続した場合などでは、睡眠時無呼吸症候群があっても刑事責任を問われることがあります。
運転免許との関係
睡眠時無呼吸症候群のように、重度の眠気を引き起こす睡眠障害がある場合には、道路交通法に基づき、運転免許の取消や停止の対象となることがあります。日中の眠気や集中力の低下を自覚している場合は、事故を未然に防ぐためにも、早めに医療機関での検査・相談を行うことが重要です。
